宮古島などロングディスタンスのバイクで最も重要なのは、フィニッシュまで「気持ちよく漕ぎ続けていくこと」です。そして、そのためにフリースピードを得られるような機材調整の工夫や、動き続けるための補給が大切になります。
4,機材の工夫
フリースピードとは、同じ推進力(パワー)で得られるスピードのことです。フリー=タダで、対価を払うことなく、などと表現されますが、実際は多額な出費がかかったりもします(汗) この比喩は別として、いかに抵抗を減らしてスピードを得るか、と考えてもらえればいいでしょう。機材設定に工夫を凝らし、走行時に受ける様々な抵抗を減らしましょう。
走行抵抗には、速度に乗じて高まる「空気抵抗」、加速と上り局面で顕著になる「重力抵抗」、そしてタイヤと路面との摩擦である「転がり抵抗」があります。これら3つの抵抗を機材の調整を通じて減らしていく方法を考えていきます。
・トライアスロン最大の敵、空気抵抗を減らす
空気抵抗を減らすには、いわゆるエアロ効果の高い機材を使います。ただ、エアロ効果の高いトライアスロン用のバイクに乗るのは確かに効果的であると同時に、それをしっかりと活かすには何はなくても、まずフィッティングです!
バイクでの走行中に受ける全空気抵抗の中で、人間の体が受けている部分は80%とも言われています。その抵抗を減らすことが非常に重要です。別記事で紹介した通り、ハンドルとエアロバーを下げれば空気抵抗が減るわけではありません。頭と姿勢が低くなり、前面投影面積が減るかどうかこそが重要なのです。フィッティングを活用して、気持よく漕ぎ続けられる範囲内で無理なく、姿勢を伏せ、頭を下げ、腕を閉じて、前から見た面積を減らしたいものです。
エアロフォ-ムを維持
その上で、なるべく多くの時間をエアロフォームで過ごすことです。上体を起こすことは、ブレーキをかけることと等しいのです。下りで体を起こすとエアブレーキがかかることがわかると思います。なので、ロングディスタンスを走る際には「エアロポジションが一番快適!」 と思えるようにセッティングすることが必要なのです。
私がベースバーを持つのは、エイドでボトルを受け取る時、時速20kmを下回るような上り、ボトルの水をフレーム内臓のフュールセラージュに移し替える時だけです。それ以外のほとんどはエアロポジションで過ごします。水分補給はSHIVのフュールセラージュからエアロポジションのまま飲んで、ジェルと固形物もフュールセルからエアロポジションのまま取り出して食べるようにしています。
ヘルメットもエアロに
姿勢を低くした時に一番突出するのは頭部です。なので、通常のロードヘルメットから空力特性の高いエアロヘルメットに交換する効果は非常に高いです。
ライダーの命を守るヘルメットですが、他の機材に比べて低コストで交換ができます。エアロ効果、コストパフォーマンスともに極めて高く、手間もリスクもありません。エアロヘルメットへの交換は誰にでも、オススメできます!
ただし、純粋なTTヘルメットは重く、暑いですし、左右の安全確認がしづらく、しかも頭を動かすと空気抵抗が増えてしまいます。最先端のエアロヘルメット、イヴェードを強くオススメします!前傾姿勢がそれほど深くなくても、新幹線の先端形状のように空気を跳ね除けてくれます。軽量なのでエイドや上りでも頭を上げやすく、頭を振って周囲の確認もし易くそれでも空気抵抗が少ないので、どなたにもエアロ効果のメリットが得られます。もちろん、 ヘルメットの生命線である装着感も、アジアンフィットなのでピッタリで極めて快適です。
ディープリム、バトンホイール、ディスクホイールというエアロ効果の高いエアロホイールを決戦ホイルにすることは必須と言えます。同じ速度を維持する時に、空気抵抗を減らしてくれるので体力をセーブできますし、同じパワーならば巡航速度を高くしてくれます。2013年のコナでクラッシュした際に前輪をノーマルホイールに交換して走りましたが、その違いに愕然としたものでした(汗
ただし、それぞれに適した巡航速度域やパワーの差を考慮しないと、ねらった効果が得られない場合もあります。注意しましょう。
よりエアロ効果の高い60mmを越えるようなスーパーディープリム、ディスクホイールは高い速度域、40km/h以上になれば非常に効果的ですが、そこまでの速度に乗せるためのパワーが必要です。むしろ、上りでの漕ぎ出しの際にホイールの重量を感じたり、加速性が鈍ったり、乗り心地が悪くなったり、さらに横風にあおられやすくなったりします。とくに、体重の軽い女性アスリートにはデメリットが多いでしょう。
速度域が高ければ高いほど空気抵抗が増えますので、エアロ効果重視。 逆に、速度域が低い時はエアロ効果よりも軽量な方がペダリングでの進む感じがよくなります。ベストはエアロ効果がありつつ軽量といった両立状態で走ることです。
バイクパートで平均時速35km以上の高速走行が可能なアスリートは、多少重くてもスーパーディープやディスクが望ましいでしょう。30~35kmであればROVAL CLX60という軽いディープリム、それ未満の速度域であればROVAL CLX40のようなエアロも期待できる軽量ホイ-ルがオススメです。
速度域が高ければ高いほど空気抵抗が増えますので、エアロ効果重視。 逆に、速度域が低い時はエアロ効果よりも軽量な方がペダリングでの進む感じがよくなります。ベストはエアロ効果がありつつ軽量といった両立状態で走ることです。
バイクパートで平均時速35km以上の高速走行が可能なアスリートは、多少重くてもスーパーディープやディスクが望ましいでしょう。30~35kmであればROVAL CLX60という軽いディープリム、それ未満の速度域であればROVAL CLX40のようなエアロも期待できる軽量ホイ-ルがオススメです。
ちなみに私は、追い越しと上りで生きる軽量性と横風への安心性という高い性能バランスを持つCLX60を愛用しています。宮古島大会もこのホイールで挑戦する予定です。
フレームになるべく物をつけない
バイク、とりわけフレームは空気抵抗を最大限減らすように設計されています。フレームにボトルや補給食などを貼り付けると、空気の流れが乱れてしまい、抵抗が増してしまう可能性があります。高額なバイクを活かすためにも、余計な付属物を減らすことが、空気抵抗を増やさないことに繋がります。それは同時に、抵抗となる重量を減らすことにも繋がるのです。
・加速と上り局面で顕著になる重力抵抗を減らす
ホイールで前述したとおり、重量は加速と上りともに不利に働きます。宮古島にあるアップダウンでも速度が低いと惰性で一気に登り切れないですし、エイド前後でのストップアンドゴーと周りが密集した中での追い越しと、軽量であることが有利になりえます。軽量化のために機材を軽量パーツにすることが考えられますが、コストがすごく必要になります。
そこで、コストをかけずに可能な軽量化は、ズバリ、余計な荷物を持たない!これに限ります!!
バイクパートにおける荷物とはボトル、補給、スペアタイアの類です。
宮古島大会のようにエイドが充実しているならば、ボトルは1本+スペア1本=2本あれば十分です。バイクに3本持てるようにして、常に一本余計に携行しているとなると、ボトル、中身、ボトルケージとステーなどの合計は約700~1,000gの重量増になったりします!
補給の固形物の重さも検討したいところです。必要量を全て携行するとなるとかなりの重さになります。宮古島大会にはスペシャルニーズというサービスがありあます。これは、自分の補給を大会スタッフに事前に預けて所定の場所で受け取るものです。こういったサービスを利用するなどして、固形物の携行はなるべく減らしたいところです。ちなみに私はジェルでのカロリー補給をメインにしていて、固形物はフュールセルに入るコンパクトな分量しか持ちません。
スペアタイヤも必要ですが、その重さと携行方法を検討する必要があるかもしれません。チューブラータイヤを持たないことで、200g弱の軽量化になります。レース本番には新品のタイヤに交換して臨み、万が一のためにパンク補修材で乗り切るという方法も海外のプロ選手を取り入れています。
私はWOタイヤをしていますので、スペアチューブを1本持つだけです。チューブラーを持つよりも100gは軽くなりますし、修理の時間がはるかに短く出来ます。この辺りは走行性能との兼ね合いもありますので、一概に良し悪しを決めるのは難しいところですが、私はスペア交換が簡易なことと、レースバイクの簡潔な外観を気に入っています。また、S-Works Turbo 24cの転がり抵抗の少なさなど性能が高いこともありWOを使っています。
これら修理用具や補給などを携行するために取り付けるステー類の重さも検討が必要です。サドル後方につけるタイプですと、50~100g増になりますので検討が必要です。
SHIVですと、補給装備はボトル一本分とフュールセラージュ、シテロ後方にボトルを1本、フュールセル内にスペアチューブ+Co2ボンベと補給食、そしてエアロバー間にジェルボトルと非常に軽量なままに、シンプル&クリーンなレース装備が整えられます。
・楽に速く走るためにタイヤの転がり抵抗を減らす
トライアスロンは単独走です。バイクパートでは、一定速でいかに路面の抵抗少なくタイヤが転がってくれるかはとても重要です。楽に速く走るために、最近のタイヤは従来の23c、あるいは21cという細いものから、24cや26Cという太いものにシフトしてきています。
昨年から私がレースで使っているのは、前述S-Works
Turbo 24c です。幅が太くなることで接地面積が横に太くなる反面、縦には短くなり、転がり抵抗が減るのです。タイムトライアルの世界チャンピオンであるトニー・マルティンは、このS-Works Turbo タイヤのプロトタイプを使ってタイトルを取っています。既にその効果が実証されているのです。空気圧は7.5~8.0気圧で使っています。その範囲だと軽く転がる感じに加えて、とても乗り心地が良いです!これは大きなメリットで、路面が悪いところでも振動が減り、エアロポジションでの上半身の疲労低減にも繋がります。タイヤ重量はほぼ変りません。これは誰にとっても即効性のある効果が得られます!
機材に関しては大きな変更は、今から難しいかもしれません。ですが、エアロヘルメットとタイヤの交換は直前でもお勧めしたいと思います。
6,補給、動き続けるエネルギーの確保
さて、気持よく動けて、機材も快適にスピードを得られるようになっても、体が動き続けるためにはエネルギーが必要です。
私の昨年の宮古島の消費カロリーは第一ラン以外では、バイク3,054キロカロリー、ラン2,375キロカロリーでした。スイムを700キロカロリー程度と見積もりますと、トータルで、6,129キロカロリーの消費になります。脂肪由来が900キロカロリー、体内にストックされたグリコーゲンから1,800キロカロリーとしても、3,500キロカロリーという膨大な量を摂取しなければなりません!
スイム前
バイク
パワージェルx8 960キロカロリー
パワージェル120キロカロリー
パワージェルx10 1,200キロカロリー
パワーバーx2 400キロカロリー
一口羊羹x2 320キロカロリー
スポーツドリンク 400キロカロリー
ラン
コーラ 500キロカロリー
合計 3,900カロリー
これくらいを摂るつもりでやっと追いつく感じです。
補給のポイントはカロリー量もさることながら、水分、そして塩分も、バランスよく十分に摂る必要があります。個々人により摂取量はいずれも変わってきますが、一気に大量にではなく、こまめに頻度を上げて摂ることが鉄則です。
また、レースを意識しつつ、しっかりと飲むこと、食べることの練習もしておかなければなりません。いつものロングライドコンビニで止まっていたり、のんびりお店で食べていては、レースのための補給の練習になりません。走りながら補給を摂り続ける練習も大会前に何度か、いえ何度も行っておくことが望ましいです。
また、甘いモノの大量摂取を受け付けない人も多いと思います。これも、事前に味覚を慣らしておく、胃腸に経験させておくことが必要でしょう。その上で、摂取可能なもの、味、量などを決めて、想定カロリーを満たせる組合せを検討しておきましょう。
いよいよ、宮古島まで1ヶ月に迫りました。トレーニングに加えて、各種準備にも励んでいきましょう!
竹谷賢二
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