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2015年8月6日木曜日

手探りの旅:パイユート峠、シエラ・ネバダ

自転車での旅こそ、ライドの核心のひとつではないか?装備を最低限にとどめて、ロードバイクであれMTBであれ、必要なものだけ持って走る。小さい頃は近所を走り回るだけでも大冒険だったし、大人になればプランする楽しさが加わる。年を重ねるごとに世界は不条理になるけれども、バイクと旅は私たちを裏切らない。

こちらの記事は、Yonder Journal(ヨンダー・ジャーナル)とスペシャライズドが行った、アメリカの名峰シエラネバダ山脈での旅の記録です。


シエラネバダ山脈は、カリフォルニアの東側に沿って北から南に400マイルにわたって続きます。高く、荒削りで、手ごわく、信じ難い美しさを持つこの山脈は、三畳紀に地下で形成され、その後、過去数百万年におよぶ構造的過程によって地球のマントルから押し出された巨大な花崗岩の塊です。その花崗岩は崩れることはありません。永遠に続く自らの寿命への報復に、夕方の地平線を横切って明るい深紅色をばらまきながら、一日の終わりに、沈む太陽をかき切るのでしょう。




この地方の有名な美しさ、そしてカリフォルニアに生きるひとの貪欲なアウトドア精神にもかかわらず、この山脈の大半は、未踏のままで、訪れる人もめったにいません。そのハイシエラは登るのが困難です。そこにある道路のほぼすべてが行き止まりで、山脈を横断する道路はわずかしかありません。冬の間、シエラの東を目指す人々は、その周囲を南のモハーベへ迂回するか、北のタホ湖を超えなければなりません。夏には、ソノーラ峠、ティオガ峠、ウォーカー峠を越えるか、あるいは時代遅れのホイールでは敷石と泥にはまりこむシャーマン峠を越えることができるので、わずかに時間を短縮されます。しかし、このすべてが冬には閉ざされます。かつては、他の、もっと素晴らしいルートがありました。フレズノとビショップの沿岸、そしてネバダ、中西部とその先をつなぐ山脈を横切る道です。この「夢」はルート168と呼ばれました。



168の大半は完成していました。東側のセクションは、カリフォルニアとネバダの境界の怪しげな名前のオアシスから、ウェストガード峠を経由してホワイト山脈を越え、ビショップを通り、ノース湖へと至ります。西側のセクションは、フローレンス湖とフレズノの間をつなぎます。しかし168の開通において多くの障害があり、決して完成されることはありませんでした。これらのセクションは、橋をかけるにも長すぎました。地形と天候も元の建築者たちには厳しいものでした。彼らはプロジェクトを断念せざるを得なかったのです。


そのとき以来、ハイシエラの大半が荒野と指定され、道路のさらなる開発は予定されていません。ロードの東と西のセクションを分断する高山地形の27マイルが残されています。シエラのこの未完成セクションはまったく近づけないわけではありませんが、荒野に指定されていて、機械化された旅行は難しいのが現状です。ハイキングブーツと、硬い岩だらけの花崗岩の峠をグルグル登る、荷物運搬用のけもの道が少し残る程度です。人通りは少なく、原始的である意味機能的。野生の荒野に完全に戻るのに、数年間使用しないだけで十分なのです。


文化的な旅行が不可能な168を走破するには、永遠に続くようなハイキングが必要です。しかし、ヨンダージャーナル・クルーの経験上、ハイキングはバイクパッキングの重要な一部であるということです。実際に、私たちにとっての「一般的な旅行」では、ライディングとハイキングに費やす時間は、公平に見て半々です。バイクを押して歩くことは、車輪付きのロバを連れて行くことに等しいですが、それを背負って運ぶこととの大きな違いは実は無いのです。途切れることのない労力が必要であり、いわば程度の問題なのです。

いずれにせよ重要なことは、あなたがその質量を動かすことです。四角いホイール、肉の生食、洗練された洞窟の居住のように、誰もそれを問題にしないのと同様です。バイクを背負う技術は開発されていないので、ひとつのスタイルが本当に正解かどうかという、確固とした理由がありません。さらにものを固定するスキルこそが、いま手元にあるナイロンの状態を考慮すると、もっとも大事に思えます。一般で言う最新のナイロンストラップ、ナイロンバックル、ナイロン固定具を想像してください。すでにバイクとは呼べなくなった物質をバックパックの上から背負うことと、最先端の固定具によりシンプルに実現できると思います。この既存テクノロジーの恩恵に、行き場のない希望というスパイスを加えてから、ゴールに向かって進めれば、すべてがうまくいくと信じられるのです。私たちの計画は単純で、可能な場合はライドし、可能でない場合はバイクを背負ってハイクします。出来ることを単純にやるだけです。


私たちは汎用性に富むAWOL を旅のパートナーに選びました。長い旅路で速く、上りでも快適なこのバイクは、泥と砂利の道でその実力を如何なく発揮します。まるで悪夢のようなルートですら、挑戦であっても問題にはなりませんでした。バイクに乗ることは私たちの得意分野。むしろ問題はバイクを分解して背中にストラップで固定する作業でした。どのように固定具が進化しても、これがもっとも重要なのです。


しかし、その重要性を本当に理解していたのかというと、まるで168の失われたセクションのように、抜けが多かったことは認めざるを得ませんでした。その空白地域に到達したとき、私たち全員が挑戦しました。しかし最後には、一人だけがその挑戦を成し遂げ、他を残して、11,000フィートの峠の雪の中へと進みました。


168における探検は、失敗と勝利の物語です。私たちは、各自傷ついた足を引きずり、自分自身の可能性について新たに理解を深めました。この探検を哲学的に話す「賢明になりたがりな男」は、「より深い自己理解は、あなたに唯一必要な成功である」と言うかもしれません。ですが、これを書いている私は、彼は正しいと、自身を必死に納得させようとしているのです。

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