トライアスロン界のレジェンド、クレイグ・クロウィー・アレクサンダーとのコロラド州ボルダーで実施したトレーニング。そのとき聞いた、彼の言葉といくつかのイメージをドキュメントしました。それは生々しく、すべてが時系列に並んだわけではないけれど、記録されたすべてが、知恵の塊のようでした。
こんな具合です:
「脈拍はまるで酸素濃度計のよう。実際、自分の心臓の動きと、どれぐらい酸素があるのかを伝えてくれるんだ。だから、高地トレーニングがどれぐらい刺激になるのかということがわかるんだね。
最初は標高5000フィート(約1.500m)で寝て、ここまで車で上がってきた。そのときの酸素量は99%だった。つまり海抜0mにいるみたいなものさ。体が対応して赤血球が増えていく。ボルダーでもよく起こることだよ。ここから上げるなら、体をもっと対応させていくなら、もう少し高いところで、体をもう少し余分にストレッチさせてやるといいのさ。
さっきやったんだけど、おかげで今は、酸素量は80%中盤になっている。そうすると、脳は酸素が足りていないと、赤血球を増やすようにとメッセージを送る。これが高地トレーニングの基本なんだ」
「高地トレーニングのために大勢の人がここに来て、多くの成功と失敗が生まれていく。
僕がここに来た理由は、正直、高地トレーニングのためじゃなかったんだ。最初に来たのは、サンディエゴで事故にあって、クルマが嫌になったから。それが2005年だね。当時は誰もここにはいなかった。前から住んでいたサイモン・レッシング、ティム・デ・ブーム、マット・リードといった連中以外にはね。
そんな時代も過ぎて、ここは今やトレーニングに最適な場所として有名だ。場所の流行り廃りはそんな風にめぐっていって、今はあるべきところに落ち着いているということだね」
「高地に来たら、無理はしないよ。
ここのところずっと体は激しく働いていたから、いま酸素量は低くなっている。明日も高いところまで登るライドをして、メッセージを送り続けてみる。脳がいままさに、この状況の中で動いている。赤血球を増やして酸素量を増やせというメッセージを送っているんだ」
「僕は感覚で物事を行う。トレーニングも、いつも感覚で決めている。
ここまでの標高、9000フィートから9500フィート(2800m前後)まで来てしまうと、楽でなければいけないんだ。このセッションの目的は、ストレスを掛けたり、2時間漕ぎながら心拍を上げたりすることじゃない。この高地に体を順応させることで、さらに強く長持ちする脚を作っていくことだ。
これまで長い間、ここまで上がってきたのは、単にランナーがそうするからであり、ケニアの人々がそうしていると聞いたからだ。でも、この脈拍酸素系が、すべてを伝えてくれている。ここにいるだけで気分悪くなるし、その理由もわかっている。すべてのセッションには目的があって、その目的がうまく運ぶことを確かめるのもその一つだよ。
これからボルダーに降りて、軽いスイムをするよ。それからまた走る。疲労の溜まった脚で、レースペースで走るんだ。42歳がつくりあげた体を見てごらん! まあウォームアップには時間をかけなくちゃいけないだろうけどね」
「ここ2年ぐらい、心拍と肺の調子が、これまでにないぐらいいいんだ。この夏にオーストラリアに帰ってきたとき、ずいぶんたくさん泳いだよ。というのも、今までみたいに走ることはできないだろうけれど、いま僕の泳ぎは今までにないほど調子が良いんだ。1990年代の終わりから2000年代に入ってからの10年間よりも、週に2回以上多く泳いでいるよ。
エンジンが温まってくると、調子がいいのがわかるんだ。ただ、体だね。体の疲労が回復しない。だから長距離のランニングはしない。でも、体重が掛からないプールは、ランとはちょっと感じが違うんだ」
「(トレーニングの)他のこともしなくちゃいけないだろ、3人の子どももいるんだよ... 24時間トライアスロンってわけにはいかないんだ。コンピュータも使ってね、いろんなことをしていく。これが、今自分が置かれている人生の、まさにその瞬間の証なんだね。
このスポーツに今も関われていて、ハッピーだと感じているよ」
「うん、今日の僕の脚も強かったね。昔、コナでトレーニングしていた時以来だね、日に2本もあの強度で走るなんて。
こんなランニング・セッションの時には、もう記録を取ることもない。それでもトレイルではスピード練習はするし、体幹トレーニングもするよ。体幹は効率よく走るために必要な部位なんだ。
スピードといっても、ちょっとした速さ遊びさ。400-200を15回。400mをちょっと遅めに走って、200mを自分のイメージよりすこし速めに走る。それを30分間続ける。400mにはずっと1:15を、200mには45で続けていく。もうこういうのはあんまりやらないけどね。完全に調整された体調というのは、すぐそこにある。そこにたどり着くためにいくつかのことを削ぎ落としていくだけだ。2本目のランのほうが調子が良かった。朝の1本目よりもね。
ビールでも飲もうかな!夕食は外食だね…」
「サウナは毎回入るわけじゃないけど、それでもフィリピンなんかでのレースに出るならね。あそこはものすごい暑いからね。結局、体が生体的に対応する速度を上げるために努力している、という感じかな。
バランスが大切なんだよ。体から水分を少し出して、血漿量を上げるように仕向けるんだ。でも、後々のセッションに影響するほど水分を出し過ぎてもいけない。安定性がカギなんだね。
スイムで軽く体を動かして、サウナに入る。水をたくさん飲んで、水風呂に飛び込む。うちに帰って、ランチを食べてプロテインシェイクを飲んで、横になって、たまにノルマテック(血流を上げる機器)も試すよ…」
「回復のためには、サプリメント、アミノ酸、それにプロテインシェイクを使っているね。失ったものを回復するために必要なんだ。
科学的には意味がないと言われるけど、5年前には冷水浴が必要だと言われていたよね。今も冷水浴は好きだし、あれは気持ちいいね。脚がしびれて何も感じなくなるから、それが理由かもしれないけどね!」
「この高地にきて、5週間が経つ。この数は、僕にとっては魔法の数字みたいなものだ。ボルダーのこの高地で5週間安定した生活を送れて、それでも体の調子が上がっていれば、僕の体調は万全だ。それに、今の僕は、これまで久しく感じていなかったほど最高のコンディションにある」
「若い連中と一緒にトレーニングするのも、すごく楽しい。僕は若いころ幸運にも、多くの素晴らしいアスリートと関わり、そして彼らが僕を育ててくれた。それがとても大切なことだったと感じている。
僕は、トレーニングとレースを愛している。でも、永遠にできるわけじゃない。42才でもまだ続けられているのをうれしく思う。こんなに高いレベルでね。でももう、アイアンマンレースは自分でも走る気はないし、走らせてくれないだろうね。長い時間をかけて体を作れるわけでもないし、回復も難しいし、コナの時みたいな2本目のランは…
もう家族を犠牲にするわけにはいかないんだ。我慢強いビジネスパートナーもいるしね。それに、僕自身の目的も変わってきた」
「ランではタイムは上がらないし、プールでは輪をかけて最悪だ。
厳しいトレーニングをするなら、疲れという波をいくつも乗り越えていかなくちゃならない。そう、ランとスイムはすこし厳しかったけど、今はいい気分だ。心のどこかのパイプが開いたのかもしれないね」
「8分を4回、ってのはよかったよ。45-55rpmを55x11のギア比で漕ぎづつける... 4回目が実際のところ一番いい感じだった。毎回距離が伸びていって、結局駐車場まで走れたからね。4分を4回、もよかったな。レース向けのペースとケイデンスだったしね」
3日間にわたって取材したこれらの文章は、ジョッシュ・シャドル(写真左)がマッサージ中に録音したもの。Many thanks Josh!!
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