7月2日付で、ロンドン行きの切符を手に入れた梨絵選手。彼女の今後のライフプランや、業界に対する不安と期待に迫る。
Specialized (以下、S):この4年間を振り返ってファンのみなさんに伝えたいことは?
片山梨絵:何事もチャレンジしないよりは、やったほうが絶対いいってこと。私はいままで日本のレースは勝っていたので、負けたら、結果が残らなかったら、その過程は全て無駄になると思っていたところがありました。そうして自分を追い込んでいましたし…。海外に出ずに、何もやらなかったらそう思ったままだったのかもしれません。
でも、本当に自分の弱さをさらけだしてまで思い切り世界に挑戦したことや、その過程というものは無駄じゃない。ファンのみなさんに、そしてこれから続く選手たちにそう伝えたい。今まで私が、というか女性がUCIポイントで五輪への枠をとるなんて無理だってみんな言っていました。確かに、今回は実際に無理だった(※インタビュー当時。日本は7月2日MTB女子代表枠を繰り上げで獲得)わけですが、工夫すれば絶対できる。私が五輪に向けてチャレンジを始めたときより、今のほうがその可能性を信じられる。4年後は絶対できると、はっきり信じています。
S:梨絵選手にとって、次の4年間は?
わたし自身はもう、今シーズンで自分がやってきたこと全てを形にしていきたいと考えています。ワールドカップを回ることはないかもしれませんね。ただ、来年の全日本10連覇は、まぁ、できると良いなと思っていますよ。一生サイクリストでもあり続けますしね。ただ、プロサイクリストという立場から、次に続く選手たちをサポートしていく立場にじょじょに軸を移していこうかと考えています。私は自転車選手になる前には教師になりたくて、高校理科の教員免許を取りました。教師になれば、常に若いタレントと出会うことができる。うん…、教師としてやっていきたいな。頑張ったら楽しいって、経験しましたし、うまくいかなくてどうしょうもない人の気持ちも分かる。そこを突破する応援し続けたいと思います。自転車関係のつながりもあるので、いま住んでいる神奈川で教員になれればいいですね。この環境も気に入っていますし、やっぱり自分の自転車ノウハウもみんなに伝えたい。そもそも教師をやりたいという夢を中断して、選手として活動していましたし。常に目標に向かっていきたいと、自転車を通じて理解したんですね。
S:レースの一線から離れる日が、いつかはくるわけですが、プロをやめるということについて不安は?選手からみて、ブランドや協会が選手の引退後の生活のためにできることってありますか?
プロ選手という職業は、一生続けられるものではありません。特にスポーツバイクのようなマイナースポーツでは、コーチとしての仕事もほとんどありません。将来の不安があるままですと、選手として活動することは厳しい。生活ができないと、夢は追えないですよね。自分にもそんな時期があって、ゆれた時期もあります。これから育っていく選手が私をみて、いまレースに専念していても大丈夫、社会にでても大丈夫だって示したい。教員免許をとったことも、そういった理由があったりします。ですが、選手をやっていくうちから、教員免許をとる前から私自身が肝に銘じていたことは、できる限り社会と関わりをもっていくこと、でした。私はマネジメント会社に所属して、そこではマネージャーさんたちと話しをする機会が多くありました。プロ選手活動をしているうちから、できる限り多く社会に貢献する活動をしていくことで、引退後もなんとか生きていくことができると思います。選手をやりながら、大学で研究している方もいますが、これはとても素晴らしいことです。ただ、選手としては、このスポーツの本場であるヨーロッパに行かないといけないなかで、同時に自分の人生も考えないといけない。私はたまたま大学入学後からこのスポーツを始めて、卒業後にプロになった。教員免許も取れていたのも良かったですが…。ただ、22歳まで日本で大学にいろといったら、ちょっと世界で1番にとるのは難しいですよね。うーん、分からない…。答えは正直ないのかな、と思います。
S:選手として、人生や将来への不安、競技の伸び悩み、プロ活動とプライベートとゆれたり、一番辛かった時期は?
一番悩んでいた、苦しかった時期はプロになって1年2年したころです。初めの1年は半分仕事をしていたので、リズムも作れていたけれど、2年目に100%プロになり、自分の生活全てをプロとして管理しなくてはならなくなりました。リズムができるまでが、辛かったですね。練習に、スポンサー集めとか…。慣れないなか全部自分一人でやって、大変でした。まぁ、軌道にのってしまえば、練習の辛さは私自身がやりたいことでしたし、スポンサーも長年やれば自然に増えていく。北京からロンドンに向けての時期は割と安定していましたね。選手としての基盤はできていたので。若い選手たちがゼロからスタートする必要がなくなるように、そういったことを引き継いでいきたい。私もレースに必死でそういったことをじっくり考える時間もありませんでしたが、今は次に続く選手たちにノウハウを伝えていきたいですね。
S:年齢的な体力の衰えは感じる?
はい。2年くらい前から。やっぱりオバトレになったときに、初めて実感しました。体が、耐え切らない。気持ちについていかない感じでした。毎週のレース、そしてトレーニングの量。あとの雑務全般ですね。明日の宿は大丈夫かな。レンタカーは、ホテルは、フライトは大丈夫か。マニュアル運転できるかな、とか、そういう負担・不満が全部重なるなかでの、遠征疲れ、トレーニング疲れ、レース疲れ。ちょうどオバトレになった前の年は、オフシーズンが短く、O2Lに向けてテンションマックスでいったのですが、体はついてこなくて。そういえば、一度、野宿もしましたよ。でも、だんだん時間がたつにつれて、良い経験できたなって思うようなりますよね。
S:じゃあタイムマシンで一年前にもどって、1個何か変えることができるとしたら?
最後の遠征、誰かひとり一緒についてきてもらいますね。スタッフとして。いくらお金をつかってでも。そうしたらだいぶ違ったでしょうね。
S:これから梨絵選手に続く若い選手にむけて、なにかプロとして、または人生においてのアドバイスはありますか?
英語は、言うまでもないですよね。ただやはり、どんどん積極的に人と関わることじゃないかな。それですね。レースに集中しがちになるけど、幅の広い人と関わることで、いろんなことが自分のプラスになると信じています!!
S:ありがとうございました!
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