弊社「トライアスリート部長」?としてもうお馴染みの小松さんが、日本でいち早くNew Shivに乗り、アイアンマン世界選手権に出場しました。 世界でわずか2,000名しか出場できない貴重なレースのリポートをどうぞご一読ください。
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スペシャライズドの小松です。
以前から個人的・会社的にも宣伝(喧伝?)をしておりましたが、10月8日にHawaii, Konaで開催された世界のトライアスリートの夢の祭典Ironman World Championshipに出場してきました。レースレポートの前に、雑感を少々。
アマチュアの部のスタートは朝7時で、制限時間は深夜0時までの17時間となっています。友人には「Hawaiiでは深夜0時の最後までレースを観戦すべき」といわれていたので、ゴールした後シャワーを簡単に浴び、20時ごろからゴール付近で観戦しました。当然この時間帯にゴールする選手の年齢層は高く、我々の年代と比較すれば絶対的なタイムは遅くなります。
でも、私が75歳、いや、65歳になった時にIronmanの距離のレースに参加していることは想像も出来ず、彼らがゴールする様子を見るのは言葉では言い表せない感動があります。実際夜22時を過ぎると、ほとんどの選手はゴールしているので、頻繁に選手を見ることは出来ません。
そして、8ビートの音楽が大反響し、大観衆を飽きさせません。記憶が正しければ、23時40分頃に日本人の女性がゴールしました。23時59分を過ぎたときに、一人の選手が帰ってきました。大観衆が彼を後押しします。残念ながら、0時00分02秒でゴールしたため、失格です。
それでも、皆の心の中ではこの選手はIronmanです。スポーツがいかに感動を与え勇気づけるか、選手として出場しないでもこの場にいるだけで肌に伝わります。
レースのMCは約1,800人の選手全員がゴールするたびに選手の名前、国名、出身地を呼びあげ「You are an ironman!」と雄たけびを叫びます。トライアスロンというスポーツは年齢にかかわらず、誰でも挑戦することが出来ます。そして、ゴールした人皆が勝者なのです。年代別80歳以上の優勝者(80歳以上の出場者は3名だけですが)が優勝スピーチで「鍛錬すれば、昨年の自分より強い自分を作ることが出来る、これがトライアスロンの魅力だ。」と言っておられました。
Ironman World Championshipのイベント自体にアメリカ人特有の演出が効果的にちりばめられているのは否定しませんが、努力することの高潔さがひしひしと伝わってきます。だから、トライアスロンはこれだけ多くの人々を魅了するのでしょうね。
さて、本題に入ります。
5日(水)に日本を出発、Hawaiiには同日の朝到着という旅程にしました。Ironman World Championshipに出場すると決定してから、なんとスペシャライズドの本社より新型トライアスロンBikeであるShivをプレゼントされました。世界選手権に出場するなんてそうそうあることではないので、レースを楽しみたいという気持ちの半面、New Shivの名に恥じない走りをしないといけないというプレッシャーもありました。今までやってきた練習量を信じるだけです。
新型Bikeに興味ある方は以下のリンクへ、掛け値なしにこのBikeはロケット並みの速さです。
8日の朝は3時半に起床、おにぎりを5個食べてレース会場に向かいます。日の出は6時ごろなので、あたりはまだ真っ暗です。Body Marking(腕にレース番号をマークすること)をしてもらい、Bikeに水を補給します。準備万端、十分ストレッチをした後Swimの会場に向かいます。
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続々と集まる選手たち |
今まで日本とアジアのレースしか経験していない私にとり、大型選手ばかりの世界選手権。立ち泳ぎしてスタートを待っている間、大型の欧米の選手の脚や腕がガンガンあたります。痛いのなんの。。。サッカーの長友選手等がヨーロッパでフィジカル面でも負けないでプレーしているのと比較すると、私は非常に貧弱で情けなく思えます。。 筋肉隆々で体重を増やす必要はありませんが、フィジカル面で負けない体を作ることが来年以降の課題の一つであること、Swimのスタートが始まってすぐに分かりました。
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スタート |
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多分は私は左から3つ目の集団の中にいたと思う。。。
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予選とは異なり、他人の脚を引っ張ったりするマナーの悪い選手はさすがにいませんが、これだけの大集団になるととても自由に泳がしてくれません。大型選手がガンガンあたってくるたび、真っすぐ進めずににコース取りがやり直しとなります。20分ほどすぎると、集団もばらけてようやく普通に泳げるようになります。さすが、世界選手権だなと驚くのは、周りに多くの女性選手がいること(Swimming capが青が男性、ピンクが女性のためすぐわかる)です。こんなに女性に囲まれて泳いだレースは過去一度もありません。。。
泳いでいるときは調子は悪くないと感じていましたが、Swimの結果をみてみると、「えっ!こんなに遅いの??」というタイムでした。コース取りが全然うまくいっていなかったと思われます。
ハワイではウエットスーツ禁止です。今回のレースは本社からもらった、Triスーツを使用しました。(ただ、パッドの部分があまりにも薄いので、Bikeパートでは自転車用のショーツをはきました。)
世界選手権であることがまざまざとする光景がT1に待っていました。私の周りにはBikeが半分くらいしか残ってないのです。「えーまじかよ、半分以上の人が僕より速いのかよ!? 今まではトップクラスでT1に帰ってきたのに。。。」愕然とします。でも、今年になってから断然得意になったBikeで巻き返しを図ると決意します。
New Shiv発進です。
New Shivはその空力をいかんなく発揮します。たまに、とてつもなく速い欧米選手に抜かれますが、それ以外は自分の方が明らかに速く多くの選手を抜いていきます。さすが、世界選手権。ドラフティングをしている選手はほとんどありません。縦1列に等間隔に並んで延々とBikeの列が続きます。追い風参考ながら手元のサイクルコンピューターでは最初の60KMを1時間37分台で入りました。 この時Bikeは5時間を切れるんじゃないかと本気で思いました。その後に迎える3つの悪夢があるとも知らず。。。。
一つ目の悪夢(というか、「やっちまったぜ」という私のちょんぼ)
70KM付近のだらだらとした登りで、前の選手をなかなか抜くことが出来ないため、ドラフティングの状況がかなり長時間続きました。これは、まずいなと思いましたが、時既に遅し。マーシャルがやってきてRed Card。(ドラフティング 次のペナルティBoxで4分間足止めとなります。)
4分のペナルティに精神的ダメージは結構大きかったですが、いつまでもくよくよしてられません。このBikeコースではかなりの頻度でGel系を含むエイドステーション(AS)があることがわかったので、75KM付近から折り返し地点までの約15KM続くきつい登りの前に用意したアミノ酸を全て補給しBikeを軽くするためボトルを捨てました。また、どこにあるのかわからないけど、次のペナルティBoxでは4分間足止めされるので、これはいい休憩になると前向きにとらえガンガンこいで行きました。
連続した二つ目、三つ目の悪夢:登っても登っても折り返し地点が見えない。補給食が足らなくなってきた。腹が減ってきた。。。。やばい。。。。。ようやく見えた折り返し地点。すぐ近くにペナルティBoxもあります。4分間の一時停止の間にとりあえず、小便をしてGel補給だけはします。ペナルティBoxを出てからは下りです。ゴリゴリこげるはずなのに力が入らない、ピーン と脚がつりました。軽いハンガーノックと脚つり。スピードが出ません。女性選手たちにも抜かれる状況になりました。
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周りは溶岩が固まったもの。 前半の余裕は全くない瀕死の状況。。
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後はひたすらASでGelをもらって補給食を絶やさないようにしましたが、結局Bikeパートの最後まで体が復活することはありませんでした。補給がうまくいった宮古島とKoreaでは重くなることを犠牲にしてでもBikeに固形物の補給食を搭載しており、腹が減りそうになった時補給食を食べて復活していました。
例年に比べ今年はまだ穏やかであったそうですが、Konaの風は噂通り。Bikeがひっくり返るんじゃないかと思う横風がたまに吹き荒れます。レースの翌日車でBikeコースを走ってみましたが、Bikeに乗っているときにはあまり気づかなかったですが、かなりアップダウンがあり、こりゃきびいしいコースだ改めて感じました。今回のBikeのミスは前半のオーバーペースとそれによるエネルギー切れと、補給ミス。全て自分の判断ミスです。
Bikeの時からGelばかり摂っていたので、Runのスタートから吐きそうでたまりませんでした。また、Bikeの際攣った脚がビリビリします。42KM走り切れるのか? 正直不安で仕方ありませんでした。
エネルギー補給はちゃんとする必要があるのでACではオレンジとGelを口に入れ、後は水で流しこむという作業を繰り返します。最初の15KM程はKonaの街の美しい海岸線沿いを走ります。沿道で応援してくれる人の数が半端ではありません。さすがに彼らの見ている前で吐くことはできないので、喉まで胃液が出てきても我慢します。
1キロ6分のスピードしか出ません。AC以外では絶対に立ち止まらない・手を抜かないとレースの目標を変更せざるを得ませんでした。私より明らかに年配の選手にもどんどん抜かれます。半分を過ぎたところ当たりで、エネルギー切れから復活したように感じられましたが、脚の復活はありませんでした。Runをスタートしてから約4時間後、再びKonaの街に戻ってきます。ものすごい大歓声です。たまに日本語で「がんばれー」という声援も聞こえますし、「Good Job! Ryo!」とゼッケンに刻まれている私の名前を呼んでくれる人もいます。
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Runスタート時より元気になりました。 |
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沿道の人たちとハイタッチ |
結果は以下の通り、ほぼちょうど平均点というところかな?
| 距離(KM) | タイム | 全体順位 | 年齢別順位 |
Swim | 3.8 | 1:08:39 | |
Bike | 180 | 5:52:58 |
Run | 42.2 | 4:01:32 |
合計 | 226 | 10:44:27 | 873/1918 | 105/209 |
一つだけわかっていることがあります。今回のレースは不完全燃焼でした。Konaを楽しむというお気楽な気持ちがあったのも否定できません。私のような普通の人間が世界選手権に出るというだけで、自分をほめてあげたいとちょっと誇りに思ったりしますが、今までの人生最大級のイベントに本来発揮すべく力を出し切れなかったのは悔やんでも悔やみきれません。来年ハワイを目指すか? と問われるとまだ即答できませんが、必ずやいつかKonaに戻ってきて、今回の自分を超える(Timeや順位ではないことここまでお付き合いされた方はお分かりになると思いますが)と決意を新たにしました。
レースの1週間前に昔歯の治療で詰めていたものが取れてしまいましたし、Hawaii滞在中にも歯が欠けました。ぐしゅぐしゅしている鼻の治療も必要ですし、今年1月2日からトレーニングを続けてきた体にも休養が必要です。10月はゆっくり休みます。
来年の宮古島でお会いしましょう。必ずや今年より強い自分をお見せします。
小松